ものづくり企業発見!企業インタビュー

中小企業総合展2013 in Kansai 出展企業の紹介

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次世代循環型社会の一端を担う企業に

株式会社秀英 会長 上田 秀行 氏

株式会社秀英
会長 上田 秀行 氏

会長・上田氏が手にしているのは高級化粧品の包装箱。難易度の高い包装箱が得意なのも強みだ。

会社名株式会社秀英
住所〒578-0921 大阪府東大阪市水走1丁目16番37号
電話番号072-966-1145
代表者名会長取締役 上田 秀行
設立1972年(昭和47年)
事業内容リサイクル紙容器
紙製容器
印刷紙器

ものづくりのまち大阪から誕生した「世界初」のリサイクル紙容器

中小企業総合展の展示写真

「世界初!90%リサイクル可能な紙容器」。
中小企業総合展のMOBIOブースの中でも、ひときわ目を引くキャッチコピー。展示したのは株式会社秀英だ。東大阪市で主に包装箱の企画・製造をしている秀英は、今回の自社ブースで、オリジナル商品「ホッかる」を前面に出して展示した。会長・上田秀行氏を中心に自社開発した思い入れのある商品だ。

「秀英と言えば“ホッかる”。より多くの人によさを知ってもらいたいとの想いで、今回は特に展示にも工夫をしました」と語る上田氏。
その“ホッかる”とは、秀英が独自に開発したリサイクル紙容器。従来の発泡スチロール容器に代わり、食品テイクアウト用に使える「世界初のはがせる紙容器」だ。

そのしくみとは、容器そのものが内面フィルムと外面紙器の2層からなり、使用後簡単にフィルムをはがして分別処理できるというもの。フィルムが紙の油汚れ付着をしっかり防いでくれるので、回収した紙は洗浄工程などが省ける上、90%のリサイクルが可能だそうだ。しかもフィルムにはペットフィルムを使用。焼却してもダイオキシンが一切発生しないという優れものだ。

「一般的なテイクアウト容器に比べるとコストはかかります。しかし、それに代わってゴミ処理費用を半減できたという事例もあります。トータルで考えると、決して高い商品ではないんです」という上田氏。
そんな上田氏の熱意の支持者はじわじわと増え、現在は全国の多くの大学生協で利用されているほか、各種飲食店、また大阪の風物詩の一つ中之島祭をはじめとするイベントや催事などでの利用もあるという。

ホッかるが利用されている場所には、必ず回収ボックスを設置するという秀英。会社として責任を持って、回収した紙を次の古紙取扱業者へ届けるという徹底ぶりは、会長・上田氏のこだわりだそうだ。

事前勉強会で、分かりやすく人に伝える方法を学んだ

ホッかるの商品ラインナップ。大きさや形は様々。

分別は簡単。食後に箱からフィルムをはがすだけ。

株式会社秀英の設立は1972年。以来、東大阪市の企業団地で食品や化粧品、医薬品などのパッケージ箱を作り続けてきた。

「“紙は文化のバロメーター”と言います。高度成長期以降、日本は紙があふれる国になりました。そんな中で紙を取り扱う会社として、もっと紙が大切にされる社会を作りたい。漠然とそう考えるようになったのです。理想的な循環型社会に近づくために、企業としてどう貢献できるか。考えた結果がホッかるなんです」。

社運をかけて取り組んだ開発は大成功。世界に例を見ないリサイクル紙容器が誕生した。

「今まで環境をテーマにした展示会などに出展したことはあるのですが、今回のような総合展は初めて。出展して私自身も勉強になりました」と語る上田氏。事前勉強会は、多忙な中、全ての授業に出席。熱心にパネルの内容を考えた。
「MOBIOでの勉強会では、今までの考えが払拭されたほど学ぶことが多くありました。こだわり商品であるからこそ、パネルの中にあれもこれもと盛り込みたくなっていたのですが、すっきりとしたほうが分かりやすいんですよね。いかに人に理解しやすく伝えるかということついて考えることができました。こんな機会を作って下さったMOBIOのみなさんには感謝です」という上田氏。

期間中は、準備日を含めて全日程展示会に出席。会長として自らブースの前に立ち、試行錯誤して制作したパネルをフル活用して、ホッかるのPRに努めた。

「展示会に出展するということは2つの意味があると思います。一つはもちろん、商品や会社について多くの人に知っていただき、新規顧客との出会いや、販売力の向上を目指すこと。もう一つは、企業が健全に経営されていることを示すこと。特にMOBIOのような行政の施設からの出展は、会社の信用力のアップにつながると考えています。信用力は最大の商品ですから」。

ものの見方を変えるきっかけにしてほしい

大学生協仕様のホッかる。より多くの学生に使ってもらいたいと語る。

自身が積み上げてきた仕事の集大成として、ホッかるが誕生したという上田氏。次世代に残せるものは何かと考え抜いた結果が実ったのだと語る。
「戦後、日本が経済発展を遂げたように、これからアジアの国々も同じ道をたどるでしょう。その中で日本にできる世界貢献は何かと考えると、かつてのようにモノをどんどん作って捨てることではなく、様々な形の循環型社会を提案することだと思うのです。私たちの会社も、その一端を担いたいと願っています」。

さらに、ホッかるが多くの大学生協で受け入れられていることについて、このように語る上田氏。
「大学生協へのホッかるの導入は、これから経済・産業を支えていく学生さんたちに対しての教育的な意味もあると思います。どんどん新しいものを作っても、それは必ず古くなって捨てるときが来る。これからは作ったものをいかに資源に戻すかを考えながら、ものづくりに取り組む時代だと思います。ホッかるが全てではありませんが、この商品を使うことで、ものの見方が少し変わるきっかけになればいいなと思うのです。そんな私たちの想いを理解していただき、導入して下さっているみなさまに対しても、私たちは本気で取り組まなければならないと覚悟しています」。

商品を通じて人を育てられるような、そしてそれを人から応援してもらえるようなものづくりをしたい、という上田氏。長年にわたって大阪のものづくりを支えてきた人の、厚みのある言葉だ。

 取材日:2013年7月3日(水) ライター:岩村彩((株)ランデザイン)