ものづくり企業発見!企業インタビュー

『第5回医療機器開発・製造展』MOBIOブース出展企業の紹介

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スウェージング加工を武器に医療分野の売上拡大を目指す

有限会社森田製針所 寺阪守正氏/中井達也氏/藤井正一氏

有限会社森田製針所
寺阪守正氏/中井達也氏/藤井正一氏

※展示会参加チームの3名。右から業務部課長の寺阪氏、業務部の中井氏、品質管理課の藤井氏。

会社名有限会社森田製針所
住所〒571-0034 大阪府門真市東田町23-24
電話番号06-6906-8686
代表者名代表取締役 森田 祐輔
設立1947年(昭和22年)
事業内容スウェージング加工
放電針尖頭加工
細物パイプ先端溶封止加工

3つの加工技術を医療関係者にアピール

▲医療用点滴で使用される医療用針。先端の細さはわずか0.1mmという微細加工が特長

森田製針所は、針・ステンレスパイプの加工で業界トップクラスの技術を持つ企業。加工方法には、スウェージング(絞り)、曲げ、穴あけ、溶接、切断、プレス、尖頭など多様な種類があるが、とりわけ同社が得意としているのが、パイプ材や線材を減径する(絞る)スウェージング加工。切削加工と比べて工程数が少なく、多品種少量・低価格・短納期で製造できる利点がある。

同社では、このスウェージング加工技術を90年以上磨き続け、極細パイプ(φ0.15mmまで)の絞り加工を実現。医療分野では、医療用点滴の容器とチューブの接合部分に用いられる針や温度センサー保護管などの製造を行っている。

すでに医療分野での実績は豊富だが、下請仕事中心で医療機器メーカーとの直取引はない。そこでかねてより、「医療関係者が集まる展示会に出展して、弊社の加工技術を広くアピールしたい」と切望してきた寺阪氏は、「今回、MOBIOさんのご好意で、念願の医療専門展に参加でき、大いに勉強になりました」と喜びを表現する。

「弊社がこれから進むべき分野が、医療関係であることは間違いありません。今は全体の30%程度の売上ですが、これをメーカーとの直取引体制に切り替えつつ、50%程度まで高めていきたいと考えています」

それくらい力が入っているだけに、今回のMEDIXでは、展示物の製作からパネルのキャッチコピー考案まで、全社員一丸となって取り組んだ。展示製作のリーダー中井氏は、「医療関係者に特にアピールしたい、弊社の3つの加工技術を訴求しました」と説明する。

「ひとつめは、弊社の最も得意とするスウェージング加工。2つめは、つい最近導入した放電加工で、極細のパイプに微細な穴をバリなしで開けることができます。これは歯科や眼科で使われる洗浄針製造に最適。3つめは、針の先端を丸くするレーザー溶封止加工で、生体を傷つけない配慮が要る医療針の製造などに適しています」

初の医療分野展示会で5件の商談が獲得でき、手応えを感じる

▲パネルコピー「技術の高さが品質の証」は、社内公募で女性スタッフがつくったもの

▲「準備段階で一番苦労したのがディスプレイ台の製作」(中井氏)という力作

勤続50年を超えるベテラン営業マンの寺阪氏は、展示会でも精力的に森田製針所の技術力をアピールし、医療機器メーカー2社とセンサーユーザー企業3社との商談を取り付けた。展示会後、オーダーされた試作品をつくり、サンプル納品まで終えた商談もあり、実際の仕事につながるかどうか、結果待ちの状況だ。「初めての医療分野展示会としては、上々の成果が上がり、手応えを感じています」と、寺阪氏は今後の展示会出展にも意欲を見せる。

一方の中井氏も、「医療関係者の声をたくさん聞けた展示会でした。ある歯科医師からは、『洗浄針の穴を増やしたタイプを開発してほしい』と新製品のヒントももらえました」と、今後の商品開発のヒントになる市場ニーズもしっかり吸い上げることができたようだ。 具体的な成果があがったことで、医療分野への進出に手応えを感じている寺阪氏だが、「それにも増してよかったのは、400社くらいの方々と名刺交換ができたこと」という。医療関係者のみならず、温度センサー保護管やマイナスイオン放電針のユーザーである自動車や電機業界の関係者とも名刺交換をすることができ、今後の市場開拓にも弾みがつきそうだ。

チタンなどの素材対応やクリーンルーム設置など、今後の取り組みを積極化

展示会を通じて試作品開発の依頼を受け、新たな製品開発のニーズもキャッチできたのだが、大企業のように商品開発の専属部署があるわけではないのが中小企業のつらいところ。「現業の仕事を抱えながら、並行して新製品開発を行わなくてはならないが、時間をかけて新しいテーマをこなしていきたい」と寺阪氏はあくまで前向きだ。今後は、ステンレス製品だけでなく、チタンなどの素材にも広く対応できる技術力を蓄積していくつもりだ。

また、「医療分野を開拓していくには、製造業としてそれなりの環境整備も必要」との考えから、「1、2年のうちにはクリーンルームを設置して、医療分野に対応できる製造環境を整えたい」と積極投資も行っていく計画だ。

今回の展示会にチームの一員として参加した若手の藤井氏は、「70代の寺阪課長のパワフルさに圧倒されると同時に、あの営業センスを見習わなくてはと思いました。自社製品や加工技術に対する知識不足も痛感したので、これからもっと勉強をしていこうと考えています」と感想を述べる。初めての医療分野展示会への参加は、若手社員の刺激にもなった様子で、社内にさまざまな活性効果をもたらしている。

創業大正10年、メリヤス編み針の製造から出発した歴史ある森田製針所は、時代とともに事業構造の変革に成功してきた。今まさに取り組もうとしている医療分野への進出が、同社の次なる成長の鍵を握っている――。

取材日:2014年8月6日(水) ライター:三浪伸夫