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下町のちょっとした感動ネタから、ここにしかない凄技
人が集まりコラボが加速する場所までの大阪のものづくりの今を知る、8ケース

日本の産業レベル向上に貢献する世界初オンリーワン技術
製造工程を変革する超精密3次元印刷機『HKシステム』

円周印刷もできる。
写真左ボトルの青色部分は印刷だ。

特殊印刷装置の製作ひと筋に43年。あらゆる産業界からの特殊な印刷ニーズに応えてきた鷹羽産業株式会社。平面だけでなく曲面・凹凸面、さらには硬軟質の表面にも自由な印刷が可能な3次元印刷機『HKシステム』を開発。超精密かつ超高速での多色印刷が特長で、従来の印刷分野を超えた全面塗装に変わる印刷技術として利用されている。家電製品、建築資材、食品、鉄工、プラスチック、ガラスおよび樹脂ボトル、錠剤など、その用途は幅広い分野に拡大している。この技術開発を行う代表取締役社長の阪本行氏は意外なことに文系出身だ。大学卒業後、スイスの工作機械メーカーの日本支社勤務を経て独立した。「私は印刷に関しては素人だったが、ゼロから勉強して素人ならではの着眼点や発想を積み重ねられたのがよかったのかもしれない。一般常識にとらわれずお客様からのご相談に極力『できません』という言葉を使わないようにしてきたことが現在につながっている。我々の工法なら液体や気体以外は何にでも印刷できるので大抵のことは解決できます」と話す。

現在力を入れているプリンタブルエレク卜口二クスヘ展開する世界最先端技術として研究・開発を行ったきっかけは今から8年前。当時で15ミクロンの極細印刷ができる「HKシステム」に着目した兵庫県立大学の教授から声が掛かり、微少電気機械システム(MEMS=マイクロマシン)の製造販売を手がける会社とともにコンソーシアムを結成。平成19 年には経済産業省の戦略的基板技術高度化支援事業「微細3次元配線技術を用いたマイクロデバイスの製造・実装技術の開発」に採択された。「MEMSに応用できるとは考えもしなかった」と阪本社長は振り返る。平成20 年には曲面への写真印刷や10ミクロン以下の超細線精密印刷が可能な技術をもつ会社として「元気なモノ作り中小企業300社に認定された。

その後も独自に開発を進め、世界ではまだ15ミクロンに挑戦しようとしている中、同社はすでに3ミクロンの極微細線を印刷できる技術を有している。技術力が評価され、平成25 年度戦略的基板技術高度化支援事業では、大阪府立大学と共同で、「高効率有機薄膜太陽電池のプリンタブル量産化基盤技術の開発」に取り組んだ。研究開発成果が発表されたと同時に、海外の太陽電池メーカーのCEOや役員が再三、技術提携の依頼に訪れたという。しかし、阪本社長は首を縦に振るととはなかった。「海外メーカーに技術の輸出をしてしまうと国内産業の空洞化がさらに広がってしまう。子供や孫といった次世代のことを考えるとできない。日本企業を優先して連携させてもらっている。

また、その専門分野でベストの商品を出してほしいので1業種1社としか契約しないと決めています」。阪本社長はほかにも完成させたいアイテムはまだまだあるという。これからも日本産業の発展を見据えた世界最先端の研究・開発を行う。

鷹羽産業株式会社
ADD:大阪市住吉区山之内3-8-11
TEL:06 6693 2703
URL:http://www.takanoha-hk.jp/

凹凸面・曲面が多くある複雑な機械部品でも木目調の印刷を施しているのが、写真でも確認できる。