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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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130年の歴史と創業理念を受け継ぎ、チャレンジ精神と発想力を育む社風。

1885年から続く老舗の化粧品メーカー、桃谷順天館。薬剤師だった創業者・桃谷政次郎がニキビに悩む愛妻のためにつくった「にきびとり美顔水」が、同社のルーツだ。以来、創業者の精神を受け継いで130年以上。長い歳月をかけて積み上げてきた、処方技術と製造技術は、変化する時代のニーズに対応するため、最新鋭設備と施設環境を導入し、常に次代の技術を追求してやまない。またオリジナル商品だけでなく、国内外100社以上にのぼるOEMによって、開発力の強化にも力を注いでいる。幅広い価格帯、多岐にわたるカテゴリーのアイテムを手掛けることで、処方や技術力のレベルアップにもつながっているという。こういった改革が進められたのは、桃谷誠一郎氏(現代表取締役社長)が入社後の93年からグループ経営に移行し、時代の変化に即応する、スピード感のある経営体制へと進化を遂げた。
現在は一般市場向けの化粧品を販売する「明色化粧品」、通信販売を主軸に展開する「RF28」、高付加価値な化粧品のOEM事業を展開する「コスメテックジャパン」の3事業を展開。自社の研究所、工場を持ち、企画・処方開発~製造まで一貫しておこなっている。「創業者の思いは、悩みを解決し、美しくなってもらいたいということ。その本質を見つめ、何ができるのかを考え実践することが、自分たちの使命だと思っています」。
今年度大阪府の「ものづくりイノベーション支援プロジェクト」の認定を受けた「Next 美顔PJ」は、原点回帰ともいえる、「ニキビ」にアプローチした事業だ。現在では、皮膚に住む細菌の遺伝子レベルでの研究が詳細におこなえるようになり、皮膚に常在するアクネ菌の種類が異なることもわかってきた。こうした研究を進める大学とともに商品を開発。これまでの常識であれば「アクネ菌を殺菌」することが最善の方法とされてきたが、それでは肌に必要な菌まで殺してしまうことになる。そこで「悪玉菌のみを殺菌し、善玉菌は殺菌しない技術の研究」に着手した。現在は試作段階まで進み、2017年春に販売を予定している。
同社の女性社員の割合は全体の62%。管理職の3割も女性が占める。だからこそ、女性が働きやすい職場を考えることは企業としての命題でもある。全部署に導入された「育児フレックスタイム」や、子どもの関係で休まなくてはならない状況に男女社員ともに取得できる休暇「親子の絆制度」などは、女性だけのプロジェクトチームから発案された。ほかにも自社、他社を問わず、使用する立場から化粧品を評価、分析する専門チーム「コスメソムリエール」を発足したり、感性を磨く時間を作るための週1回の「クリエイティブウェンズディ(ノー残業デー)」も。こうした独自の制度や、ピンクリボン活動などの社会貢献が評価され、同社は2011年「大阪市きらめき企業賞」を受賞。
会社が成長するためには、まず人だという。「私たちの理念に共感し、失敗を恐れず、一緒に夢を実現していく力のある人に育てていかなくては」。同社は「やってみたい!」と声に出せば、年齢に関係なくチャンスが与えられ、チャレンジできる社風がある。そんな土壌を持つからこそ、長きにわたって夢を売ることができるのだろう。

株式会社桃谷順天館
http://www.e-cosmetics.co.jp/
大阪市港区市岡2-4-30 TEL 06-6571-6621

創業者の想いがつまった「にきびとり美顔水」は、現在も「明色美顔水」として販売。その他、口コミサイトなどでベストコスメ第1位の座を獲得、数々の商品を生み出す

現在は研究所を5つ(中央研究所・フロンティア研究所・彩~Sai~創造研究所・NEXT R&D研究所・製造技術研究所)に細分化。この研究開発こそが、同社の心臓部である