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アートの力で関西を元気に。繊維・ファッションのまちに誕生した出会いの場。

大きなガラス窓の明るいギャラリーはアーティストによる作品展示・販売、イベント開催など多くの用途に使われている。ギャラリー奥にはカフェを設置。展示作品を眺めながら、ゆったりとしたひとときを楽しめる

大阪市中央区の船場地域。古くから「繊維のまち」と呼ばれるこの地域の一角に2017年5月、新しい「アートの拠点」が誕生した。運営するのは松尾捺染株式会社。創業から91年、現在は東大阪市と大東市にプリント加工の工場を持つ老舗企業だ。同社の前身となる松尾盛進堂が木版彫刻及び木版プリント事業で創業した大阪船場の本社ビルで、 “アートの力で関西を元気に”を合言葉に「ARTでGENKIになるプロジェクト」が進行中だという。
「大阪の繊維業界には、紡績や原糸などの材料を製造供給する川上事業者、織布や染色など生地を製造供給する川中事業者、製品企画や卸売・小売など販売を担う川下事業者という、すべての事業者が地域内に立地しており、かつては確固とした流通ルートが築かれていました。しかし、昨今のグローバル化の流れの中で海外との厳しい競争を強いられ、業界全体のマーケットの規模が縮小に向かっています。そのような中、今までの流通ルートを守って商売をしているだけではいけないと、船場を支えてきた事業者たちが立ち上がり始めたのです」と語るのは、松尾捺染株式会社の代表取締役 松尾治氏。
2010年、大阪府と協同組合関西ファッション連合が共同で運営する繊維・ファッション事業者のための支援事業「せんば適塾」に参加したことをきっかけに、オリジナル商品事業や新たな流通ルートの開拓に本格的に乗り出した。今までつながりのなかったデザイナーやアーティスト、大学教員や学生など様々な立場の人と出会い、プロジェクトが生まれ、その指揮を取ってきた。「ARTでGENKIになるプロジェクト」の代表 津村長利氏との出会いも、そんな中でのことだった。「せんば適塾に参加し、色々な方とプロジェクトを進めながら、一方で新しい自社商品のあり方も模索してきました。その中で顧客からのニーズが見え始め、実店舗の必要性も感じました。さらに進めてきたプロジェクトなどの発信の場、人とのつながりの場がもっと必要だとも感じました。そんなタイミングで津村さんと出会いました。津村さんは手芸用品メーカに長年勤められていたこともあり、作家やアーティストなど才能を持つ人たちとの人脈が豊富でした。そんな津村さんが背中を押してくれたことで、この場所が誕生したのです」。船場盛進堂は松尾氏の生家。空き家となっていたところをリノベーションし、明るく開放的な空間へと蘇らせた。
1Fには開放感のあるギャラリー&ショップ、2Fに松尾捺染オリジナルプリント生地のショップとワークショップスペース、そしてかつて防空壕だったというB1Fには地下ギャラリー。イベントの企画や情報発信、販売事業を津村氏が担当する。「今後この場所を、人との出会いの場としてどう活かすかを模索しているところです。駅からも近く、利便性が高いので、人は集まりやすい。そこに技術や感性を持つ人たち、材料を供給する人たちなど、色々な立場の方が集い、新しいものが生まれ、それを発信できればと考えています。それとは別に大阪の芸術の拠点として、和の文化を発信したいという気持ちもあって、年に数回この場所を上方落語の寄席にしたいと思っています。初開催時は大入りでした」と語る津村氏。この場所から生まれるアートが人を元気にし、また人の輪がつながる。そんな場所を目指している。

船場盛進堂「ARTでGENKIになるプロジェクト」
https://www.artdegenki.jp/
大阪市中央区博労町1-2-5 TEL 06-6261-5180
松尾捺染株式会社
http://www.matsuo-nassen.co.jp/

2Fのテキスタイルショップには、800種以上の松尾捺染オリジナルプリント生地が並ぶ。フランスをはじめとするヨーロッパのアンティークテキスタイルの復刻デザイン生地は、カルトナージュの愛好者に大人気。ショップ横のワークスペースにはミシンを4台設置し、講師を招いてのワークショップなどがおこなわれている