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「飛ぶロボット=ドローン」という発想でアイデアを形に。

橋梁点検ドローンでは機体の重心のバランスを変えて、機体上面にカメラを搭載。「見上げる撮影」を実現した飛行ロボット「アルバトロス」

大阪市立大学、徳島大学と共同開発した橋梁点検ドローン。機体上面に撮影機器を設置し、機体やプロペラの写り込みを回避。測量データと照合し、ひび割れやさびの位置を記録

ドローン元年と言われた2015年から3年。現在はサービス視点での関心が高まってきているが、菱田技研工業代表取締役社長の菱田聡氏は、ドローンが置かれている現状を30年前のパソコンにたとえる。「非常に有用なツールとして注目されているが、活用方法はまだ確定していません」。同社は産業用ドローンを自社開発、用途に合わせてカスタマイズする技術力を持つ企業だ。多くの国内メーカーは、中国製のフライトコントローラをブラックボックス的に使用するが、同社ではオープンソースのフライトコントローラを活用することで、機体の運動特性に合致した制御系の設計や、要求される機能に応じたシステム構築を実現。これまでも橋梁点検を目的として撮影機器を機体上面に設置したものや、建築物解体現場で散水をおこなうモデルなど特殊用途向けドローンを製作してきた。
同社の前身となるのは曾祖父が1920年に設立した菱田要鉄工所で、1995年まで伸鉄製造販売を生業としてきた。工学部でものづくりに役立つ技術を学んだ菱田氏は、2004年大阪市のロボットラボラトリー設立を機に、ロボット事業に参入。音声認識、音声合成機能を備えた展示会ロボットなどの開発に参画した。つまり菱田氏にとっては「飛ぶロボット=ドローン」なのだ。ロボットが原点ゆえに、同業者とは発想がそもそも違う。
「ドローンは自律し、飛行とホバリングをして運搬できる。その代わり墜落もするし、風があると飛べない。飛行時間、距離が短い。可搬重量が小さい。そういった長所短所のなかで、使えるものにいかにアレンジできるかがドローンのビジネス化につながります」。潜在的なニーズはまだまだあるはず。ニーズをさぐって仕事につなげ、喜んで購入してもらえる製品をつくりたい。そういう想いで開発や実験を繰り返すなかで、熱心な大学の先生方とも出会え、ようやくビジネスモデルが見えてきた。これからもドローンだけでなくロボット全般にまだ見ぬ活躍の場は無限にあると考え、「ドローンもできるロボットシステム研究開発企業」を目指す。

>紙面からの続き

伸鉄とは板状のスクラップを加熱圧延し鉄筋棒鋼などを製造することで、現在ではほとんどなくなってしまった業態。鉄が貴重だった時代だからこそ、安い人件費と少ないエネルギーで再生できる伸鉄は重宝された。戦前から継続して日本経済の発展に貢献し、高度成長期に業績も伸び順調な経営だった。しかし時代は移り、バブル崩壊で鉄が余り出し、人件費も高騰した。そんなパラダイムシフトによって、業界ではシェアの10%を誇っていた同社も伸鉄からの撤退を余儀なくされる。当時、業界紙である鉄鋼新聞にも「老舗の菱田技研工業が伸鉄から手を引いた」と大きく掲載されたという。しかしロボットという最先端事業に果敢にチャレンジしていく菱田氏のその姿に、ものづくりの遺伝子はしっかりと受け継がれていた。

菱田技研工業株式会社
http://www.i-hishida.com/
堺市西区築港新町2-7-2 TEL 072-244-6905

日本ニューマチック工業株式会社、徳島大学の三輪准教授と共同開発中の防水機能付きの散水ドローン。解体現場の課題であった「ほこりの発生防止対策」を解決

実用化を目指して現在進めているのが、神戸高専の清水准教授との共同研究による、壁面吸着ドローン。トンネル壁面の打音検査などの応用を想定している