MOOV,press

MOBI6

ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

い草の持つ懐かしさ、やすらぎをいつでも手元に。

100%国産い草ででつくられたブックカバー。最初は硬さもあるが、次第に手に馴染んで柔らかくなる。い草の吸放湿性で、本を持つ手がいつもサラサラ。1,500円(税別)~

布製のブックカバーだと垂れてゆるくなってくるが特許申請した独自開発の貼り合わせ技術により、本に沿い、片手でも持ちやすい。い草は5色、裏の柄と合わせて25種類と豊富。
最近では難しいとされた手捺染によるプリントもできるようになり、表現の幅がさらに広がった

畳は古来からの伝統の技によってつくられる、日本独自の敷物。新しい畳のい草の香りは心をほぐし、畳の部屋でくつろぐと心からほっとできる。フローリングなどの上に敷く花ゴザも同じようにい草を使い、日本の気候風土に合う優れた特質を備えた魅力的な和のインテリアだ。シンメはこの花ゴザの縁となる綿織物の原反をカットし、テープ状に加工して資材として販売する会社だ。
あるとき資材提供だけでなく、完成品をつくって欲しいという依頼があった。畳が傷まないように使う10cm四方の座卓敷だったが、い草商品は大きなものが多いため小物にすると、縫製の細かい始末が気になった。また工程が細分化されているため、クオリティも安定しない。「そこで知り合いに自分でつくりたいと相談したら、ミシンや部品を譲ってもらえたんです」。そう振り返る取締役社長の真目祐治氏。そこでものづくり魂に火がついた。依頼された商品以外も本業のかたわら、寝る間も惜しんで試作する。い草は縁を付けないとひっかかるが、縁を付けるといろんな制約が生まれ、見栄えも悪い。貼り合わせても接着剤でもきれいに仕上がらない。数年かかってようやく納得するものがつくれた。
こうして生まれた、い草の小物ブランド「amtsumg(アムツムグ)」。ブックカバーやペンケースをはじめ、いずれの製品もい草の手触り良く、しなやかに手になじむ。「私たちが慣れ親しんでいる、い草をもっと感じて欲しくて身近な製品をつくりました」。このプロジェクトは自ら行動することで、助けてくれる人が次々現れた。経験のなかった販路開拓も順調で、今や取扱いは200店近くに。最近では和室のない住宅も多い。そういう環境で育った若い世代にとっては、アムツムグが初めての「い草体験」となる。「先日店頭で販売した際、高校生が手にとって“これ、おばあちゃんちの匂い!”と感激していました」。そう、い草には日本人の感性に訴える懐かしさがある。「使う人が喜んでくれるものをつくりたい。いつか街で、使っているところを見かけたいですね」

>紙面からの続き

1983年に創業したシンメの経編レース資材は花ゴザだけでなく、クッションやカーペットの縁に使われている。全盛期には年間100万m以上の出荷を誇っていたが、今では10万mほどに減少。それに代わって綿素材のテープに移行し、現在はそちらがメイン。リーマン・ショック後、取引先のメーカーが海外に移り、現地生産の話もあったが、会社の方針として「量より質、安心して使えるものを売りたい」という考えがあり、現地でつくっても品質管理ができないため断ったという。「amtsumg(アムツムグ)」でも、そういうものづくりに対する真摯な姿勢は変わらない。

有限会社シンメ
http://www.amtsumg.com/
高槻市安岡寺町3-19-2 TEL 072-688-2567

ノートカバーやメガネケース、コースターまでラインナップも充実。「まだまだアイデアはあります。今後も新柄や新商品を増やしたいですね」(真目氏)

amtsumgは、ブック・ノートカバー以外に鮮やかな色のペンケースもある

製造業が苦手とするパッケージデザインやネーミング、コピーもすべて社内で考えた。い草の懐かしさや優しさを訴求する売り場づくりまで完成度が高い