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「路上の芸術」マンホール鉄蓋。
その安全性を追求し続けて。

コレクターもいるマンホールカード

下水道広報プラットホーム(GKP)が毎年開催する「マンホールサミット」。全国から約 5,000名が集まるなか、実物展示、グッズ販売、トークショーなどが繰り広げられる

グラウンドマンホール(以下GM)という名前を聞いたことがあるだろうか。マンホールの鉄蓋のことだ。「戦後から蓋はコンクリート製や鋳鉄製が混在しており、“置きぶた”の呼び名どおり、マンホールの上にただ置かれていました。80kgほどある蓋の重みで飛散を防いでいたんです。現在はテーパー構造といって受け枠と蓋が密着しているので、上を車両が走ってもガタつかないほど安定したものになっています」。
そんな歴史を語るのは、株式会社荒木製作所の2代目として長年GMづくりに携わってきた荒木寛代表取締役社長。昔はねずみ鋳鉄製だったが、現在は球状黒鉛鋳鉄製になり、軽量化かつ耐久性能も上がっている。GMのデザインが多様化し、色がつきはじめたのは80年代後半。カラフルな色付けは、滑り止めの効果が高いセラミックス溶射の方法と樹脂の流し込みによるもの。ミシンの脚などの鋳物製造業としてスタートした同社が、「これからは公共事業だ」とGM製造に着手したのは高度成長期の60年代。下水道用を専門に、蓋の飛散を防ぐ二重構造を業界でいち早く取り入れるなど、安全とエコの面からモデルチェンジを重ねてきた。
しかし時代の変化にともない、全国で40社以上あった工業会の会員数も今では半分まで減った。そこでこれまでの技術やノウハウを活かして、新たな取り組みもはじめた。まずはデザイン性の高いGMが「路上の芸術」と呼ばれ人気であることを受け、「ミニチュアマンホール鉄蓋」を開発。これは実際に道路に敷設されている実物と同じ材質・工法を用いて職人の手で製作された1/3.5サイズのもの。全国からファンが集まる「マンホールサミット」でサンプルを展示したところ、問い合わせが殺到したため商品化された。
もうひとつは貯留槽事業。貯留槽とは大量の水を一時的に溜めて特殊な枡で少しずつ流出する設備のことで、台風やゲリラ豪雨などの大量の雨水による浸水被害から街を守る役割を担う。貯留槽に溜まった水は、草木の散水や水洗トイレの水として再利用も可能。同社では豪雨対策としてこの貯留槽の設置工事をおこなっている。貯留槽事業の需要は年々高まっており、GMと貯留槽、この2つの本柱で、今後も安全な都市空間の維持に努める。

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地域の特色をうまく出した絵柄や、最近では地域×企業コラボなど注目を集めるマンホールの鉄蓋。これらのデザインはグラウンドマンホール(GM)の製造会社内でおこなわれることが多いという。「蓋表面の凹凸はスリップ防止のためにあり、それを前提にデザインしなければなりません。そういう実用性を考えると外部デザイナーに依頼するより、蓋をつくる会社がデザインするほうが合理的なんです」。荒木製作所では社長みずからデザインを手がける。子どもの頃から絵を描くのが好きで、コンクールに入選経験も多々ある荒木氏。今では鉄蓋をキャンバスにその才能を発揮している。「好きが高じてGMの本を書いた方がいるのですが、その方がGMにハマるきっかけとなったのが、豊中市のマチカネワニをモチーフにしたGM。じつはこれ、私がデザインしたもので、ちょっと自慢です(笑)」。


株式会社荒木製作所
http://www.araki-ss.co.jp/
https://themgmstore.official.ec/
東大阪市森河内東1-21-19 TEL 06-6781-5232

蓋の多くは鋳鉄製で重さは約40kg。昔は自治体マークや幾何学模様のシンプルなものだったが、近年は名所、名物を取り入れたデザイン性の高い鉄蓋も普及

実際のGMと同じ材質・工程で作成した本物感が特徴の「ミニチュアマンホール」。現在は同社のウェブサイトで購入できるほか、ふるさと納税の返礼品としても入手可能

貯留槽工事は1級遮水工管理技術者が施工管理。掘削・基礎工事後、貯留槽ユニットを組み立て、保護シートを被せて仕上げる。さらに土を被せ、地中に埋め込む