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「5ミリでダウンの暖かさ」、
新素材カポックが
冬の装いを変える。

厚さたった5mmで、ダウンの暖かさ。特殊な製法で着ぶくれしない、スリムなシルエットを実現した「カポックノット」

「5ミリでダウンの暖かさ」、新素材カポックが冬の装いを変える。
アパレルの世界でも、近年エコやサステナブルを謳う商品は増えている。しかしその志に賛同しつつも、着心地やデザイン、そして価格の点から様々な制約があるのが現状。原料開発から商品企画・生産までを手がけるアパレルメーカー双葉商事が2019年発表したコートブランド「カポックノット」はそんな現状に一石を投じるもの。同社は創業から先進的な挑戦を続け、2019年には「大阪ものづくり優良企業賞」を受賞した。最近ではワコールの人間科学研究所と協力し、スタイルをきれいに見せるパンツや機能性素材を使った特許商品など、まだ世にないアイテムを送り出している老舗アパレルメーカーだ。冒頭のコートもそんな双葉商事の画期的な商品だ。2019年開始されたカポック事業は、深井喜久代表取締役社長の息子である、アパレル事業部営業部長の深井喜翔氏が立ち上げたもの。東南アジアなどに自生する樹木「カポック」の繊維は中が空洞になっているため、コットンの1/8の軽さと湿気を吸って暖かくなる吸湿発熱という特性を持ち、「木になるダウン」と呼ばれるほど。しかし繊維長が短すぎて糸にするのは難しいとされ、これまでは救命具やクッションの詰め物などにしか使われず、衣類への利用は少なかった。同社では大手繊維メーカーと協力して合成繊維を混ぜる手法を確立し、コートの中綿に使うことに成功。商品化に向けて、クラウドファンディングサイト「Makuake」で資金を募ると、目標額を遥かに超える約1700万円もの金額が集まり、「カポックノット」ブランドとして昨冬デビューした。
このカポック事業は、ものづくりのしくみを改革する画期的なものだ。カポックの綿は実から採取するため、樹木を伐採する必要はなく、栽培に農薬や化学肥料を使うことがないサステナブルな素材。また、カポックの需要が増えれば、東南アジアでの雇用創出や緑化、さらには森林保全のサイクルが生まれるという。深井代表は「はじまったばかりのプロジェクトですが、カポック製品を通して人にも地球にも優しい、サステナブルな社会を実現したい」と話す。循環型ビジネスの最前線がここにはある。

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創業以来、老舗海外ブランドとの提携、自社ブランドの確立、サービス業への参入など、アパレルだけにとどまらず常に新たな分野に挑み続けている双葉商事。先代は創業からわずか5年で海外展開の第一歩として、北米・東南アジアにニット製品の輸出を開始。さらに1962年にはいち早くアジアを中心とした海外生産を進め、その2年後には国内製品の旧ソ連への輸出もはじめるといったように、とどまることなく事業を拡大してきた。現在、代表を務める深井喜久氏も、スイスのラグジュアリーブランド「バリー」の企画製造業者の選考コンペからはじまり、最近ではワコールの人間科学研究所との協力による新製品開発など新たな挑戦を続けている。「バリーの日本におけるパートナーを決める選考コンペでは、自社以外はすべて大手商社という状況でした。はたから見れば勝ち目はないと思われたかもしれません。しかし私は戦略を立てて、コンセプトワークから自分たちのものづくりまでをアピール。おかげで指名を勝ち取りました」。その際には、これまで培ったコネクションをフル活用。糸は双葉商事がオリジナルでつくり、ヨーロッパのデザイナーや中国・台湾・韓国などの製造工場の知財を組み合わせながらものづくりするしくみもつくり出している。時代を見据えた先進性と失敗を恐れないチャレンジ精神は今も引き継がれ、「大量生産・大量消費が当たり前」のアパレル界で、その常識を打ち破るカポック事業へとつながっている。

双葉商事株式会社
http://www.futabashoji.jp/
吹田市千里山東1-7-18 TEL 06-6387-8128

深井喜翔氏とインドネシア農家の人たち。カポック製品の売上の一部を現地に還元し、カポックの改良などに使い、現地の雇用を生み出し、次のカポック製品の素材として使用する循環型社会を目指す

1972年から参入したボウリング事業。ここから着想を得た専用ウエアは、プロボウラーの姫路麗選手のプロデュースのもと国内トップシェアを誇るまでに成長