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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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デザインの発想を変え、ロスを最小限に
「立体造形」ニットの可能性。

皮革部分をニットに替えた「ニットブーツ」も製作。ソックスやストッキングのようなフィット感を持つ

現在「Made in JAPAN」の衣類がどれだけあるか、ご存知だろうか。経済産業省等の資料によると、衣料品の国内生産比率は数量ベースで約2.4%。あとは海外生産。つまり私たちが着ているほとんどの衣類は海外でつくられているのが現実。こうした中、国内の衣料品製造において、新しい打ち出しを模索する企業がある。ニット原料から商品企画をはじめ編立・縫製・仕上げまでの一貫した工程システムを持つ第一メリヤスでは、「CAMETARO(亀太郎)」というブランドを展開。これは「立体造形」の技術でつくられている。
立体造形とは肌や生地のストレスの原因となる凹凸や不整物を出さない製法、つまり「縫わずに編む」ということ。従来の丸編みの場合、決まったサイズを1分間に何mも編んで洗いをかけ、長方形の板状になった編み地からパーツを切り取って縫製される。実はこの縫い合わせ時に生まれる凸凹が気づかないうちにストレスになっている。立体造形の場合、このような流れ作業ではなく、職人が編み機につきっきりで微妙な調整をしながら、1本の糸から編み上げていく。造形後も洗浄精錬や蒸気仕上げなどの全行程を手作業で丁寧に仕上げる。考え抜かれた造形と編地の張りは、体験したことのない着心地を味わえるはずだ。このように立体造形ニット製品は1本の糸で、縫製なしに立体造形をつくりだせるため、編み目の数や大きさなどを変化させて、縫い目なしにプリーツなどの作成も可能。最近は独自のデザイン性に対する認知度が高まり、ファッション業界からの受注が増えはじめている。またこの製法はパーツを縫い合わせる必要がないので、縫いしろが発生しない。「縫いしろだけでセーター1着につきA4サイズ以上のロスが出ます。これがなくなるだけ軽く、縫い目のゴワつきもなくなり、ニット特有の自然な伸縮性が生かされて格段に着心地が良くなる」と小久保貴光代表取締役社長は語る。「廃棄物を出さない立体造形によって、大量生産大量消費から脱却できます」。いいものを丁寧につくってお客さんに届けること、それがサステナビリティにつながる。美しいものづくりのあり方だ。

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1919年、メリヤス業界のトップ企業であった白金莫大小製造所で技術を習得した小久保亀太郎氏が東京・目黒で「小久保メリヤス」として独立開業。その後、関東大震災の影響を受けて大阪・都島に移転、昭和に入り小久保メリヤス以下、産地の数社が合併し第一メリヤスが誕生した。
亀太郎氏が会長をしていた頃、競輪選手のウールの競技用パンツをつくったことがあり、その評判がよかったというのは今も伝えられている。
2代目の小久保恵三氏はヨーロッパのニット業界における考え方、装いやつくりに強烈なショックを受け「日本でもこのようなニット製品を生み出すべきだ」との強い思いで、ヨーロッパのニット工場や機械メーカーを熱心に訪問して、人力に頼っていたニット産業の機械化を進めた。
そして3代目小久保昭延氏と4代目の小久保貴光氏は、脈々と受け継がれてきた技術とDNAで、着る人のことを想い「心が見える製品」を生み出している。「祖父がこだわっていた毛肌着は日本にはなかった文化、ウールを肌着にする贅沢を伝えたいという心意気をこれからも大切にしたい」。現在、創業者からその名をつけた「CAMETARO(亀太郎)」は、インナーウエアからスタートしたが、いずれはアウターも手がけたいと、自社ブランドの拡大にも力を入れている。

第一メリヤス株式会社
https://www.gauge.co.jp/
枚方市津田駅前2-8-1 TEL 072-858-1221

身体を包み込む感覚。贅沢な肌触り。常に快適な状態をキープする「CAMETARO」のアンダーウエア。完全な1枚の立体造形で肌に優しく、縫目が存在しないので折り返し部分もなく、ツッパリや引きつれもない

同社には2019年、ニット好きな20代の職人が入社して日々奮闘している。「彼女たちと一緒に、 これからの“繊維の未来”をつくっていけたら」と小久保社長は語る