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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
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よそではできないものもおまかせ。
「アクリル加工の駆け込み寺」。

エンドユーザーから依頼で5mほどの木の天板を支える脚を製作。その後、こちらが飾られた家を設計した建築事務所の人が気に入り、新たな顧客になったという

アクリル樹脂加工の試作や多品種少量生産で知られる共栄化学工業株式会社。1951年の創業時は樹脂をリサイクルするメーカーだったが1988年に工場が全焼し、受注生産にシフトしていった。3代目代表取締役となる稲垣圭悟氏は2004年に就任。引き継いだ当初は一社に依存する形で、不況の波に飲まれ発注が8割激減。18人いた職人が4人になった。「入社までは異業種で働いていたので加工の知識が深いわけでもなく、営業の経験もない。廃業を考えるほど厳しい状況下で、事業戦略を徹底的に考え直しました」。模索するなかでたどり着いたのが、ネットによる集客だった。「2時間で見積もり上げます!」を謳い文句に掲げ、製造業ではまだ珍しかった業務形態に挑んだ。
当時売りにしていたのはアクリルを切削して形にするNCの量産。多く手がけたのがドラッグストアの化粧品売り場や家電量販店にある棚什器に、セットするディスプレイ用アクリル。ひとつの什器に対して20~30種類あり、それを春と秋に入れ替えるため大量の注文が入った。いっぽうネットの注文は単品が多く難しい加工もあった。稲垣氏は自分たちがやりたい仕事を「高い技術力が必要でよそでは絶対にできないもの」と語る。小ロットでも親身に対応してきた結果、現在は顧客の約40%が個人で内容もばらばら。そんな「ややこしい注文」を専門にして技術を上げてきた自負があり、それは今後も変わらない。
同社ではアクリルの炉曲げ加工など、対応できる会社が少ない加工も手がける。炉曲げ加工は炉でアクリルを温め柔らかくし、木型に沿わせて形成するが、この木型も内製している。また大学向けの実験器具など精密さが要求される加工も得意だ。小惑星探査機「はやぶさ2」の部品試作、新幹線のホームにある電光案内表示板の時計カバーなど他社がためらう案件にも対応し、今では「アクリル加工の駆け込み寺」と呼ばれるほど高い信頼を寄せられている。成長に合わせて大型成形炉をはじめ設備もどんどん導入してきた。今春には事務所にショールームをつくる予定だという。挑戦はまだまだ止まらない。

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「社員には“好きなこと”をさせる」方針。

同業他社に先駆けてウェブサイト作成に取り組んだ共栄化学工業。先駆者の自負を持ち、その後も新しいコンテンツを積み上げて、見ごたえのあるサイトを構築している。当初は全社員の顔写真が掲載されていた。「サイトを立ち上げた頃、自分たちには何も武器になるものがなかった。せめて工場としての敷居を極力低くしようと考えて、社員全員の顔写真をキャッチコピーもつけて掲載したんです」今年に入ってからは70周年記念企画として、アクリルの加工や設備、職人などを工場長の伴さんが紹介する「アクリル伴ちゃんねる」という動画が登場した。
そして社員の個性を大切にし、アクリル加工の枠を超え商品を企画することを通じ、次代の会社の姿を探っている。スポーツ好きの稲垣氏は、みずからプロスノーボード協会にスノーボード型のトロフィーを提案して受注につなげた。同様に社内に「好き」を仕事に昇華させる空気が受け継がれている。動画にも登場する伴さんはお祭り好きで、入社と同時期に導入されたレーザー加工機を使って祭りグッズの木札をつくり、各地の秋祭り関係者に売り込んだ。好きが高じてつくられた商品は関係者の間でも好評で、今ではうちわ、はちまきなども手がけ、人気商品へと育て上げている。


共栄化学工業株式会社
ttp://www.kyoeikagaku.com/
八尾市山賀町4-63
TEL 072-922-1681

レーザーエッチング+炉曲げ加工、と同社の技術を集結した意匠性が高いオブジェ。レーザーで切り抜いた極細のアクリル板を、炉に入れ型に押し当て曲げる高度な技術が注ぎ込まれている

作家からの依頼で製作された店舗用ディスプレイ。アクリルに透明なシートを張り、天井から吊ることで空間にアート作品が浮かぶようにみせている