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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

クリエイティブを刺激する。
ワイヤーの世界へようこそ。

美術館やギャラリーの作品を和紙のワイヤーロープで壁に吊るすという提案も。白なら壁に溶け込んで作品が浮いているようにも見え、カラフルなワイヤーなら存在感も増す

一般には馴染みがないが、ある世界では必需品とされるものがある。フラワーアレンジメントにおけるワイヤーがまさにそれ。針金のまま使われる裸ワイヤーと高度な技術で色紙を被覆した地巻きワイヤーがあり、生花の根本にワイヤーを括りつけそれを束ねることで飾りができる。柔らかく角度も自由自在。なのにしっかり定着でき、見た目のバリエーションも多彩だ。現在こういうワイヤーを扱う会社は国内でもごく少数。1948年に創業した株式会社朝日ワイヤープロダクツは造花の芯の針金づくりからスタートし、同業者が海外生産によって淘汰されていくなか、技術を守り素材や色、硬度を高めたものなどバリエーションを増やしワイヤーの価値を高め、業界を支えてきた。
定番商品の地巻ワイヤーは隠して使うアレンジを支える裏方的な存在であり、先代まではこれを中心に展開してきた。いっぽうで最近脚光を浴びているのが、和風デコレーションワイヤー。こちらは意匠性が高く、花と並ぶ主役級の存在感を放っている。「あるとき紙を太めに巻いたらラッピングに使えるなと思って。さらに紙や色の種類を増やしていき、紙だけでなくレーヨンと組んでみたんです」。そう語るのは朴憲久代表取締役社長。花の世界ではプリザーブドラワー、ハーバリウム、海外では食べられるアートとして知られるシュガーフラワーにまで活用され、流行とともに進化を遂げてきた。
同社の製品はヨーロッパやアメリカを中心に輸出もされており、海外での販売には可能性を感じているという。「和紙という素材の魅力に加えて、色味が多く海外には少ない中間色も多いため注目されています」。最近では花以外の用途を探ってウェブサイトも刷新、SNSにも力を入れ、ギフト系の展示会にも出展している。「ものづくりをする人は、想像を超えた思いがけない使い方をされます」と新たな出会いに期待する。フラワーアレジメントに限らず、クリエイターにとってアイデアを刺激される資材であることは間違いない。今後の情報発信や交流で新たな可能性も広がりそうだ。

>紙面からの続き

アイデアをすぐカタチにできる装置づくり。

3代目の朴憲久氏は10年前に代表取締役に就任して以来、ワイヤーに巻く紙の種類を増やしたり、硬度を上げるなど数々の改革をおこなってきた。またコーティングワイヤーのように、ヨーロッパで主流となっていたものを、国内での問い合わせに応じて国内生産を始めたものもある。このようなアイデアや要望に対して、もとからある機械を改造し、ときにはちょっとした装置を自作してビルトインする機動性が強み。朴氏は前職で大手AV機器メーカーのデジカメの設計をしていただけあり、機械関係はお手のもの。アイデアさえあればいくらでもつくれるという。「硬度を高めるための装置は2、3年かかりましたが、他社に真似はできないノウハウがつめ込まれています」。工場には長い歴史を刻んできた機械が並ぶ。「古い機械で生産しているのでコストは抑えられます。最近は海外製でも安くていいものも増えてきました。それに負けないようにするには、自社の機械や装置でつくって付加価値をつけること。あとは用途拡大につながるアイデア次第ですね」。臨機応変に対応できる技術力で、ワイヤーの新たな可能性を切り拓いていく。


株式会社朝日ワイヤープロダクツ
https://www.asahi-wire.co.jp/
東大阪市楠根1-7-5
TEL 06-6746-1161

和紙に自由に形を変えられるラフィア加工が施されたラッピングワイヤー。ひねりを加えるだけで簡単に美しい包装が可能に

和風な色彩のレーヨン糸を緻密に巻きつけたワイヤー、ワイヤーツイスト。花の形に丸めてふんわりのせるだけで華やかさがアップ。髪飾りにも使える