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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

ファクトリーとしての誇りと
時代が求める
デザイン性を両立。

ウェブストアは2019年から。ナチュラルカジュアルの「NARU」と、日常にちょっと背筋をのばしたいときのきれいめライン「REFRAIN」の2ブランド展開

コロナ禍に見舞われた2020年。その大きな打撃を受けた業界の一つがアパレルだ。そんな苦境に喘ぐアパレル業界において、好調な企業がある。創業1953年から70年近く、国産にこだわってきた南出メリヤス株式会社だ。ファクトリー主導のアパレルは日本では非常に珍しい。先代が閑散期をまかなうものとしてオリジナル商品の製造を決め、企画力を培っていった。時代とともにつくるものもインナーからアウターへと変化し、それにともないデザイナーを抱え、技術的な生産能力を高め、設備投資をして基盤を固めた。躍進の鍵となったカジュアルブランド「NARU」は、代表取締役社長の南出和成氏が立ち上げたものだ。
「NARU」は価格にも驚く。現在市場で見られる国産のウエアはわずか3%。その多くが付加価値をつけられた高額商品なのに対し、デイリーウエアらしい価格帯で勝負する。「コスト面は昔から追求してきました。生地も素材から吟味して交渉する。泉州という国内屈指のニットの産地というメリットもありました」。卓越した技術者がおり、機械の背景も理解したうえで高品質のものをつくり上げることができる。そして、20代社員も多く、工場主体のブランドの欠点であった、デザイン性やトレンドといったファッションに重要なファクターを併せ持っている。
さらに数年前から市場の変化を見据え、生産方法を見つめなおしCAMを導入したことが功を奏した。経営革新計画の採択を経て、ものづくり補助金で購入した。これで生産性が劇的に変わったという。デザインして指示書を描いたら、オペレーターがCADデータを作成しCAMで一括裁断する。使用開始は2020年4月。コロナ禍によるオンライン展示会でも一括オーダーが少なく、つどつどの発注ベースの生産となっていったが、これに対応できたのも小ロットでのリードタイムが短いCAMがあってこそ。「時代の変化を肌で感じている。しかし今、頑張ればコロナが落ち着いた頃には、新しいスタイルで突き進める」。それは「次の時代に渡せる企業に育てることが、自分の使命」と語る、南出氏の改革が実を結ぶときでもある。

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ウェブ、SNSを活用して、スピード感を。

ブランディングが自社の弱みと考え、南出氏はみずから「なにわマーケテイング大学」に通ったという。そしてこれまでマンパワーで売ってきたものを、ネットを活用することに切り替えた。2019年にはオンラインショップを開設、プロモーション活動としてSNSを活用している。これによってユーザーとの距離も縮まり、売上げも好調だという。たとえばLINEでは、ユーザーの「こういうものが欲しい」という声をスピーディーに反映していく。このやりかたであれば秋冬のニットでも1ヶ月半で納品でき、時々の受注生産にも迅速に対応できる。またアパレルの宿命的な課題である在庫も、ほとんど持たずにすむ。最近では社屋の2階に撮影スタジオを設置し、できあがったサンプルをすぐ撮影してウェブにアップする体制も整備。今後はYouTubeでの発信にも積極的に取り組みたいという。動画なら実際に着て動いたときの感じや、シルエットの落ち感まで見てもらえる。「発信できることはまだまだある。これからはエンジニアとクリエイターが必要。デジタル対応ができる人をしっかり養成していきます」

南出メリヤス株式会社
https://minamide.jp/
https://narufactory.shop/
泉大津市北豊中町2-2-3
TEL 0725-21-0865

暮らしを豊かに、自然と笑みがこぼれる着心地の良い「高品質」を展開する「NARU」のデイリーウエア

CAMの導入により、外注していた裁断も内製化。何枚も重ねた生地をコンピュータ制御によりカットしていく。カメラを使用することでプリントされたパターンを自動で認識して裁断する