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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

ダンボールで暮らしを楽しむ。
変幻自在な素材の可能性を追求。

強化段ボール製のロッキングチェア「たゆたう」。体重100kgの大人でも座れるよう接地面の段ボールを格子状に組み合わせ、強度を持たせている

裁断時に余ったダンボールを活用した「お昼寝マットごろ~ん」は災害時の緊急用寝具としての活用を想
定。通気性を確保して床からの冷気を防ぎ、使用しないときは丸めて保管

「子どもの頃は工場に落ちている型抜き後のダンボールを集めて、ブーメランとかつくっていました」。ダンボール製造業のアラカワ紙業、その2代目である辻明徳代表取締役はこの素材に囲まれて育った幼年期を振り返る。加工しやすく工作に最適の素材であるばかりか、軽くて強度もあり、リサイクルできて環境に優しい。そんなダンボールの
魅力を伝えるべく、辻氏は代表就任以来、基本となる箱型製造にくわえてオリジナル製作に力を入れている。ダンボールの厚みは0.8mm~8mm。1㎡あたりの比重によって強度も変わる。そういった特性を熟知しているから、思いもよらないカタチを生み出せる。はじまりは顧客の要望でつくった造花用のディスプレイ台。これがロングセラーとなり、業種によって陳列物も見せ方も違う什器製作を数多くこなしていった。社長就任は2007年。勉強会やセミナーに通った時期もあった。大阪府中小企業家同友会に入り、MOBIOで月1~2回開催される出展企業による展示ブースでのプレゼンテーションと交流会がセットになった「MOBIO-Cafe-Meeting」にも常連になるほど通い、アグレッシブに人とつながっていった。SNSで新作のダンボール製品を公開することで仕事も舞い込んできた。自分が欲しいもの、フィットするものとの想いを込めて、オンラインショップは「I Just」とネーミング。
今後はさらにオリジナルアイテムを増やしていきたいという。工場2階の事務所はダンボール製品で溢れている。スリッパ立て、パンフレットスタンド、収納棚。取材もダンボール製デスクと椅子に座っておこなわれた。「将来的には被災地用の家具をつくりたくて。使い心地を体感するために置いているんです」と辻氏。思いついたら、すぐつくる。家もつくれるのではと尋ねてみると「じつは建築デザインの専門学校に通っていたので、興味はあります。ルームシアターとか秘密基地のようなものは挑戦してみたいですね」とのこと。また辻氏には「ダンボール=紙、すなわち安いという世間の思い込みがある」との思いが。それを払拭できるような、付加価値のある商品をつくりだすことで、まだ見ぬダンボールの可能性を広げていく。

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毎年夏、自社敷地内でのワークショップを開催。

アラカワ紙業では2016年から、所属する大阪府中小企業家同友会で「東大阪市民ふれあい祭り」に参加。辻氏は八戸ノ里でダンボールの椅子と畳のデザインのコースターを販売。また他の仲間が花園中央公園で、真鍮のネームプレート、畳コースター、コルクを使った写真立てのワークショップを開催すると、行列ができるほどの好評ぶり。
今度は自分でやってみようと、子どもたちの夏休みの宿題に合わせて自社工場内で開催した。「最初はダンボールの貯金箱。小銭を入れると大きさで自動選別してくれるものをつくりました」。多くの来場者が訪れてすっかり気を良くした辻氏、第2回目を秋に開催し、以降今日に至るまで毎年ワークショップを開き、夏の風物詩として定着している。ほかにもランドセル型のペンケースなど、毎回工夫を凝らした内容を用意。今では近隣の小学校だけでなく、障がい者施設からも参加者が訪れるなど、地域貢献も果たしている。


有限会社アラカワ紙業
https://www.arakawabox.co.jp/
東大阪市荒川3-14-12
TEL 06-6728-1055

逆さまにすると違った表情を魅せる棚「Luckラック」(左)。蓋を閉じるとメールの形になる「カートンフィーノ」(右)はA4サイズの書類が入り、メール便で送付可能