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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

ブランドや商品の価値を高める
パッケージのあり方を追求。

1993年にはインドネシアに工場を開設、メイン工場として9割近くがこちらで生産されている。そのクオリティの高さから海外でも顧客を増やしている

紙・繊維・木材・金属・樹脂、さまざまな材料を用いて、さらに印刷技術を組みあわせることで、これまでに存在しないパッケージの表現や可能性を追求

ジュエリーケースは素敵なシーンを演出する名脇役。映画やドラマでのここぞというシーンに登場し、ケースを開けた瞬間、物語は最高潮に達する。三栄ケースはそんなジュエリーケースの製造からスタートし、現在は商品のブランディングを支えるパッケージの製造と企画を得意とする企業。ジュエリーケースとして多くの人がイメージするのが、ベルベットのような美しく滑らかな外観だろう。これは静電植毛(フロッキー)加工が施されたもので、同社の原点ともいえるコア技術。静電植毛加工は、電力を利用して素材に短繊維(パイル)を植えつけていく技術。この技術を初めてジュエリーケースに応用したのは、代表取締役である浜名雅広氏の祖父である。
祖父が現在の道すじを決める発明をし、父がそれを組織として整え、さらに躍進の礎となるインドネシア工場をつくり発展させた。では自分は何をすべきかと考えた浜名氏は、クリエイティブな方向に自社の進むべき道を見出した。勉強会へも出かけ、クリエイターとの交流を重ねた。そうしてパッケージのあり方を見なおしたうえで、多様に開花させる「堺ラボ」を展開する。ラボではコンマ何mmまで計算してデザインし、さらに効率の良い組み立て方まで考えた設計ができる。「高価な商品を入れるパッケージなので、とことんつき詰めたい」
ものづくりに携わる人なら誰しも、技術や製造方法、スペックの話がしたくなる。それは製品に自信があるから。しかし最近は少し変わってきた。「もっと消費者の立場に立った提案、顧客が何を求めているのかを探り引き出して、必要とあらばパッケージをつくるし、そうでなければ最適な方法を一緒に考えます」。またパッケージには、大切なものが収められる気品や佇まいが備わっているかも重要だという。これもクリエイターとの交流から芽生えた感覚。気品や佇まいは数値化できないもの。そしてつくり手の美しさへの興味や探究心がなければ生み出すことはできない。最近ではそんな話のできる人材も増え、社内カルチャーとして根づきつつある。デザイン思考をともなったものづくりが同社の未来を切り拓く。

>紙面からの続き

クリエイティブなものづくりと真剣に向き合うことで
社内の意識が大きく変わった。


クリエイターとのつながりを経て、大きく変わろうとしている三栄ケース。それ以前にも代表取締役である浜名雅広氏曰く、「会社が目覚めるきっかけになったできごと」があったという。ある大手企業から、日本を代表するデザイナーが担当したアニバーサリー商品のケース製作の依頼がきた。たとえば物理的に無理がある膨らみを実現したいといったように、随所にこだわりがこめられたがゆえに、いろんなところで断られた案件だった。
「自分たちは経験も知恵もなかったのである意味、逃げ遅れたんですよね(笑)」。でもそれが自分たちを大きく前進させたという。直接打ち合わせにも参加させてもらい、それも刺激となった。とにかく大変だったけれど、チャレンジする楽しみが生まれた体験。「今思い返しても、よく着地できたなと思うほど本当に苦労しました。クリエイターとしては締め切りの直前まで粘りたい。自分たちもそれに応えたい。完成後には感謝の言葉もいただきました。一生忘れないできごとです」


三栄ケース株式会社
https://san-ei-case.com/
堺市中区毛穴町128-9
TEL 072-289-8583

堺ラボでは、3DプリンターやCADCAMカッター、レーザーカット機なども併用しながら、機械だけでは加工することができない、繊細なものづくりを手作業とかけ合わせて取り組む