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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。

パワフルな改革と
若手の活躍で、
未来に向かって突き進む。

大阪市内に約300坪の敷地を持ち、ステンレス圧力容器や輸送タンクなどを製造。特殊機械加工を除いて、製缶・バフ・機械加工がすべて自社工場内で可能

製缶業というと一般的には曲げ・切断・溶接などをおこなうイメージだが、旋盤加工やバフ研磨まで内製化を進める企業がある。1939年創業の大和鋼業株式会社は、分厚い金属板に曲げや溶接を施し、タンクや水槽などをつくりあげる。これらは圧力容器や撹拌機メーカーに納品されモーターや計器をつけたうえで、大手化粧品メーカーや薬品メーカーにて使用される。この生産体制を整えたのは代表取締役の大竹順氏で社長就任以来、工場長とともに就業規則や給与体系の改定、設備関係、人材教育までさまざまな改革をおこなってきた。
多くの認証も取得した。ISOからはじまり最近では経営革新計画も承認された。テーマは「ステンレス加工の準ワンストップ生産方式の取組み」で、材料を仕入れたら同工場でほぼすべてを一貫生産するというもの。これにより以前、約46%だった内製率を現在70%弱まで高めている。こういった認証取得は大竹氏の発案。「製缶業は多い。埋もれないよう、名刺を見たらすぐに思い出せる会社にするためにはひと目で分かる認証取得だと」。それは社員への資格取得奨励にもつながっている。「全ての社員は技能士など、国家資格や民間資格に挑戦してもらっている。試験費用は会社が持ち、就業後の練習や学科の勉強は残業扱い。試験日も休日出勤扱いにしています」
工場には若い人が多い。大竹氏はなぜうちに依頼するのか顧客に聞いたことがある。「皆さん同様に、若いスタッフが多くて5年後10年後も元気に働いているだろうからと言われる。将来性込みで依頼されているんですね」。現在平均年齢は35歳。しかもその多くが社員からの紹介による入社というから驚く。自分の職場を紹介して一緒に働きたいということは、いかにここが居心地良く働きやすいかという証拠だろう。入社した若い社員はサッカー経験者も多く、鶴見緑地にあるフットサル場を借りて月1回大会を開催し、社長も一緒に汗を流す。そんなアットホームな雰囲気を肌で感じ、入社を希望する人もいるそうだ。

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知る人ぞ知る、「松坂ギャフ」とは?

大和鋼業株式会社をウェブで検索すると、予測候補で「松坂ギャフ」なるキーワードが出る。ギャフとは、釣れた魚をハリ先で引っ掛けて取り込むための釣具のこと。大物の魚が釣れて陸にあげる際、ラインが重みで切れてしまわないように取り込むアイテムだ。棒の先端にかぎ針状の針を搭載することで、水を多く含んだ魚を取り込みやすいように設計されている。これが製缶業の大和鋼業とどう関係するのだろう。じつは副工場長の松坂氏の趣味が高じて自分用に、ステンレスの厚板をレーザーでカットし、角度を見ながら削ったりしてつくった製品。これが釣り仲間から好評で、会社で販売することになったという。大竹順代表取締役が入社した2005年にはすでにあったというから、意外なロングセラーだ。その後はモデルチェンジを繰り返し、ラインナップも増えてコンスタントに売れている。累計販売は300個を超え、大間のマグロ漁師からも注文がきたことも。同社にはこういった社員のアイデアを活かせる風通しの良さがある。

大和鋼業株式会社
https://yamatokogyo-kk.com/
大阪市城東区今福西4-2-12
TEL 06-6932-2881

10代~30代前半の若い従業員が約半数を占める。現場の責任者である工場長も40代。また父子2代にわたって勤務するケースも。離職率が低いのも自慢だ