パイオニアだからできた新規開拓、時代の先を見据えた戦略で邁進する。

成功のツボ

挑戦:社会ニーズを見据え、ねじ製造の基盤技術を積極応用
成果:1,000億円の医療マーケットに進出

1957年に日本初のステンレスねじの量産を開始して以来、約半世紀。プロダクトアウトからマーケットインへの転換を図り、技術開発・製品企画・営業戦術の連携により、新たな顧客のニーズを形にしている。

今も変わらぬ、イノベーションを起こす『DNA』

 不可能を可能にすること−−、それは技術者の醍醐味である。
 日本で初めてステンレスねじの量産に成功した丸ヱム製作所。その頃は材料となるステンレス線材そのものが存在せず、素材の開発からステンレスの硬さに対応できる工具や金型まで自社製作した。
 このエピソードに同社の精神は凝縮されている。それは「人のやらないことをやる」というフロンティアスピリット。その精神は、まもなく90周年を迎える現在も脈々と受け継がれている。

しなやかな特性を持った新チタン合金を利用して歯の矯正ができるGUMMETALの商品パッケージ。

 躍進の原動力ともいえる、日本初の錆びに強いステンレス製ねじは、高度経済成長期の住宅着工ブームに乗り、アルミサッシの締結に使われ、ヒット商品となった。80年代に入り住宅市場が飽和状態になると、市場ニーズから製品開発をおこない顧客へ提案する“マーケットイン”型の企業へとシフトを図る。その経営戦略を松元收社長は「いかに今後伸びていく市場、業界を探すか。近未来を予測しながら積極的に仕掛けていくことが大切」と話す。

「屈曲しやすく、高強度」との相反する特長を併せもつ金属・ゴムメタル歯列矯正ワイヤ。歯の矯正は常に弱い力をじわじわとかけていく。
従来の金属であれば、ある程度まで歯が移動するとワイヤの力がなくなってしまうが、この素材は大変しなやかな特性を持っているため、同じ力を維持しながら動かし続けることができる。

新たなマーケットの開拓を目指す『サポーティングインダストリー』

製品の内部にあって目立たないけれど、その重要性から「ねじは産業の塩」といわれるほど社会を支えている。それゆえ時代の変化とともに求められるものも変わってくる。そして今後の社会ニーズを見据えた結果、市場開拓に力を入れているのが医療分野である。
 なかでも人体の中に使われるねじは、これまで輸入に頼っていたが、今後は国産を増やすべく製品開発だけでなく、輸出もできるように取り組みを始めた。

数ある機械要素の中で、もっともシンプルと言える「ねじ」。丸ヱム製作所は開発型メーカーとして、常に市場のニーズに応えたものづくりをおこなっている

 丸ヱム製作所の医療機器第1号となったのはねじ製造技術を応用したゴムメタル製の「歯列矯正ワイヤ」だ。海外、特にアメリカにおいて、歯の矯正治療は広く普及しているが、最近では日本でも審美性向上や、正しい噛み合わせによる咀嚼能力の向上などの面から注目が高まっている。その反面、歯列矯正は長い治療期間を要し、疼痛や装置装着に対する不快感など、メンタル、フィジカルともに患者にとって負担にもなっていることが実際の治療を躊躇させていることも忘れてはならない。

日本発から世界初へと大きく羽ばたく

 ゴムメタルは、ゴムのような特性を持つ、特殊なβ型チタン合金である。この素材はもとの形に戻ろうとする性質があり、加工は困難を極めた。一般的なねじ製造業者は、金型や線材加工を外注するが、同社は金型からすべて内製できる技術と設備を持つ。このゴムメタルワイヤも、伸線、熱処理といった、ねじ製造で培ってきたコア技術を応用して困難を克服。
 2010年には商品化に成功した。患者に優しいうえに強度があり曲げやすい、つまり歯医者が患者に合わせて現場で加工しやすいというメリットも兼ね備え、治療期間の短縮や口内炎症の低減などの効果が見込める。マーケットインの発想と自社技術が融合した、革命的な商品である。これ以外にも既成概念にとらわれない発想で商品開発に取り組み、新素材ねじを次々と生み出してきた。なかでもマグネシウムねじの量産は、世界初となる快挙だ。
 2013年には医療分野の商品開発を加速させるため、研究開発拠点「テクノロジーセンター」を、本社敷地内に竣工させた。産官学とのコラボにも積極的に参画し、市場ニーズを先取りした製品を開発していく考えだ。
 「ここは、医療、マグネシウム合金、金属ガラス、高品質製品群の拠点と位置づけです。今後も時代の変化に素早く順応し、新たなニーズを製品という形に変えて、つくり出していきたいですね」

ブレイクタイム

Q

仕事のターニングポイントはいつですか?

A

私は高度成長期の昭和46年に入社したのですが、当時はつくればつくっただけ売れる時代でした。しかしオイルショックで打撃を受け、1985年には社内変革を考えるようになりました。今後訪れるであろう少子高齢化を見据え、プロダクトアウトからマーケットインの発想に切り替えたのです。
今振り返れば、この時がターニングポイントだったと思います。

Q

座右の銘は?

A

「人生、ニコニコ顔で命がけ」
京都大学総長も務められた医学者・平澤興氏の言葉ですが、必死の形相で頑張るのではなく、つらい時も苦しい時も、笑顔をけっして忘れないことを大切にしています。

企業概要

企業名
株式会社丸ヱム製作所
コア技術
塑性加工、金型から一貫製造
代表者
代表取締役社長 松元 收
住所
〒574-0015 大東市野崎4-7-12
電話番号
072-863-0103
企業紹介
http://www.m-osaka.com/jp/takumi/1016/
企業HP
http://www.maruemu.co.jp/
資本金
1億5785万円
従業員数
180名(内パート社員 50名)

認証:2007KANSAIモノ作り元気企業100社、ISO13485、医療機器製造許可(許可番号:27BZ200136)