アイデアを形にできる、製品開発トータルソリューション。

成功のツボ

挑戦:積極的な行政施策の活用
成果:自社製品の開発、多方面での事業拡大

設計会社として1988年に創業し、大手電機メーカーのパートナー企業として製品開発を支援してきたスペシャリスト集団。現在は「ものづくりの会社」として設計~試作・量産まで製品開発トータルソリューションを実現している。

手間ひまかける、それがものづくりと人材育成の共通点。

 大阪府・門真市に本社を置く株式会社スタッフは、自社の強みを「製品開発トータルソリューション」と掲げる小山社長以下、約50名の社員の多くがエンジニアという会社だ。ものづくりの広範な技術を保有する各プロセスのエキスパートが揃い、試作や部品のみといったオーダーから、回路設計、基板設計、機構設計からソフトウエア開発・試作・中小規模の量産まで、ものづくりに必要なすべての機能を一社で提供できる。それが製品開発トータルソリューション。「製品に使われている構造をすべてつくり、一社完結ができる会社は少ないと思います」

チームスタッフで、テニスのための社会貢献をしているうちに、相乗効果として多くの人との出会い、それが仕事につながることも

 ユニークなのが同じフロアにある、株式会社チームスタッフの存在。もともとは2000年に社内につくられたスポーツ事業部だった。小山氏の趣味であるテニスを通じて、知り合いのコーチから選手のスポンサーを探しているという声がかかったのをきっかけに発足した。だが「お金を出すだけのスポンサーでいるより、コーチを雇って一緒に育成していくほうが面白い」と運営サイドにまわり、2008年には法人化。現在ではテニススクールやクラブ運営、プレーヤーの育成、指導や支援からスポーツに関するコンサルティングやイベント企画・運営、関連商品の販売までを手がけている。ここからは何人ものプロの選手を輩出し、国内でも少ないS級のコーチも自分たちで育成した。同社の企業理念にも「新しい価値の創造にチャレンジし、人を育て未来を開き、社会に貢献します。」とある。この理念はたとえば3Dプリンタの早期導入や、若い技術者の獲得・人材育成、そしてスポーツ分野でも明確に実践されている。

こちらは2013年、東日本大震災復興支援のチャリティマッチのため来日したマリア・シャラポア選手と小山社長

 「望まれている以上の工夫を加えてみる。それが自分たちのものづくりの根底にある考え方。社員によく言うんです。“パートの人が組み立てやすいものを開発しましょう”と。そういう気持ちで取り組めば、基盤設計でも少しでもジャンバー線を少なくするとか、本当に組み立てやすいに配線をするようになる。こういうことを考えていると設計時間は長くなるかもしれませんが、最終的にコスト削減や性能アップにつながります。これもテニスの人材育成の精神と同じ、手間ひまかけて丁寧に、です」

学習型のアルコールガジェット「TISPY」誕生。

利用者の飲み過ぎを防ぐための学習型アルコールガジェット「TISPY」。従来のアルコールチェッカーは計測時点でのアルコール濃度の測定をおこなうものだったが、「TISPY」は測定を重ねるごとにデータを学習し、個々のユーザー向けにパーソナライズされ、最適なアドバイスを知らせてくれる

 昨年10月、アルコール検知ガジェット「TISPY(ティスピー)」が発売された。この商品は開発から生産までを手がけただけでなく、自社商品として販売にも携った、新たな挑戦となる。「TISPY」は利用者の呼気中のアルコール濃度を測定し、そのデータを蓄積することにより、翌日の予定に影響が出ないようにするアドバイスを通知するもの。東芝が展開する無線LAN搭載SDメモリカード「FlashAir」を使えば、Webアプリとの連動にも対応する。
 開発のきっかけは、昨年1月東京での展示会にて東芝サイドから相談を受けたことに端を発する。「TISPYはもともと東芝社内の新規事業制度に応募されたアイデア。社内での事業化を試みたが、コストや開発期間の長期化で頭を悩ませていた担当者が、当社のブースに立ち寄ったことから話が発展していきました」。こうして学習型アルコールガジェット「TISPY」制作プロジェクトは始動する。まずは市場調査も兼ねてクラウドファンディングサービス「Makuake」にあげてみると、1日で150万円集まった。「クラウドファンディングははじめての経験でしたが、これは素直に嬉しかったですね」。発売日は決まっており、逆算するとこの時点で半年しかなかったが、そこはエキスパート集団、大阪府の補助金「ものづくりイノベーション支援助成金」を申請、認定を受けてゴールに向かって一気につくり上げた。

お酒のボトルを開けるように、キャップを回転させることでアルコールセンサ部を露出できる。ここで利用者の呼気中のアルコール濃度を測定する

 「TISPY」は基本的には健康管理に使うもので、年齢、身長、体重などの初期設定を入力し、個人のアルコール分解能力もテストする。小さなコップに入ったビールを飲み、15分単位でアルコールが分解されていく数値を測る。そしてデータを貯めて精度を上げていく。つまり、使うほどに精度が上がる。飲んでいる時にブザーが鳴るとともにLEDが光り、「今日はいつもよりペースが早いよ」「水を飲みましょう」と言った通知が入る。胸ポケットに入る小型のフォルムに、すごい機能が詰め込まれているのだ。

アイデアを目に見えるカタチにし、完成品へと導く。

 昨年4月に開設された、コンサルティング・スペースは梅田の中心に立地する、新しくおしゃれなビルにある。ここでは10数名のエンジニアと営業担当者が常駐。取材時もひっきりなしに人が訪れ、ものづくりに関するあらゆる相談に応じていた。同社のアイデアを完成品にまとめ上げる技術が、高く評価されている証だろう。
 しかしまたなぜ梅田に? という疑問も持ち上がる。「創業以来これまでは家電中心で受
注してきたためリーマン・ショック後、当社も大きな痛手を受けました。ですから脱家電ではありませんが、他のジャンルへの進出もはじめたわけです」。手はじめに名古屋支社を設立して車とアミューズメントに注力し、さらに梅田にオフィスを構えることで全方位のものづくり集団として、新たなステップを刻む。

代表取締役社長の小山栄一氏(右)と現在、営業推進チームのチームリーダー廣江朋也氏。廣江氏も入社当時は、チームスタッフのマネジメントを担当していたという

 これまでにも多岐にわたるジャンルでものづくりに携わってきた。タブレット・ウェアラブル機器・オーディオ機器の電気製品や、ロボットアーム・スタンド型LED表示板といった機械製品。最近注目を浴びている医療機器に関しても、手術用の遠隔操作ロボットの試作から、歯科治療器・注射器・電気メス・各測定器まで。歯科用医療機器メーカーとともに小型トランク型の治療器具セットは、平成25年度の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)にも採択されている。これはドリルや吸引器などの診療機器がコンパクトに収まるように設計され、歯科医が片手に持って運ぶことができるもの。小山氏曰く「やったことのないことばかりやっています。それが楽しいんですよね(笑)」
 たゆまなきチャレンジ精神、新しいことに挑戦するとき、小山氏は何を重要視しているのだろうか。「インスピレーションが大きいです。TISPYに関しては時間も限られており、この製品は技術的にできるだろうという前提でのスタートではありますが、さまざまところで断られて困っていることもわかっていたので、“やってやろうじゃないか”という男気ですね。大事なのは損得よりも、“この仕事をやることで社内の士気が上がるか”ということ。それとひとつのジャンルで成功することが、次の営業にもつながりますから」

ブレイクタイム

Q

オンとオフの切り替えはどうされていますか?

A

月~金は設計の仕事をして、週末はチーム・スタッフでテニスに携わっているので基本オフがなく、ずっとオンの状態。とはいえ身体を動かすことでリフレッシュできますし、違う目線で仕事に向き合うことができていると思います。

Q

最近プライベートで嬉しかったことは?

A

長男が独立したことですね。彼はずっとテニスを続けてきて、現在はスタッフの営業をしているのですが、就職して3年経ち、ようやく独り立ちしてくれたのが、親として心強いですね。

企業概要

企業名
株式会社スタッフ
コア技術
製品開発トータルソリューション
代表者
代表取締役 小山栄一
住所
門真市新橋町1-4
電話番号
06-6906-6484
企業HP
http://www.rd-stuff.com
資本金
1500万円
従業員数
55名