ものづくりこそ原点。プレス加工は無限の可能性を秘めている。

成功のツボ

挑戦:高い技術力をベースに、広範囲の新規開拓を積極的に取り組む
成果:あらゆる業界のプレス品を受注。インテリアブランドにも着手

60~150tまでのプレスをする単発プレスライン。新卒も積極的に採用しており、従業員の平均年齢は30代半ば。確かな技術とバイタリティー溢れる人材が高品質を保持しながら製造できる態勢を整えている

大物から小物まで金属プレス加工をワンストップ対応。

プレス加工は、さまざまな産業にとって欠かせない基盤技術として発展してきたが、今や国内では減少の一途をたどる。海外に生産拠点を移したり、金型投資をやめプレス業から板金業に移行する企業も多いなか、国内生産に徹することを理念とし、創業から27年で大きく飛躍したのが北新工業だ。同社は設備投資、技術開発、人材確保といった、ものづくり企業に求められる課題も着実に乗り越えてきた。

2軸独立のサーボ駆動により、スライドの平行度を高精度に維持し、高い生産性と成形精度の向上を実現したH2W200サーボプレス。メーカーが顧客を連れて見学に来るほど、同社ではこのマシンの機能を使いこなしている

特に設備投資は多くのプレス業が抱える課題だが、同社では業界でも有数の充実度を誇る設備を備えている。中物から大物製品の受注が多く、大型プレス機8台を使用しての複数工程にも対応。いかなる加工にも対応できるよう機械のレイアウトにもこだわり、プレス加工から二次加工までスムーズな生産ラインを構築している。「2015年に最新のサーボプレスを2台導入しました。加工領域が狭いとこういった機能は必要ありませんが、当社のように幅広い製品を扱っていると複雑な加圧方法を駆使することになり、マシンの持つ機能を最大限に発揮できます」。そう語るのは代表取締役の新田典彦氏。まもなく高速のプレス機も導入予定で工場が手狭になるため、以前使っていた駐車場に倉庫を新設して在庫を移動させる予定だ。そのように毎年なんらかの増設・増築がおこなわれている。

新田典彦 代表取締役。1992年松原で創業、今年で27年目を迎える。父も同業で物心ついた頃から仕事を見てきた。実家で技術を身につけたが、家業を継ぐのではなくイチから同社を立ち上げた

そしてもちろんマシンを操る技術力も積み重ねてきた。質の高い人材を育成して独自のノウハウを蓄積する。2011年には経営革新計画が承認され、製造部門を新たに設置。図面立ち上げから試作、金型製作、プレス製造、タップ、大型自動洗浄装置による仕上げまで一貫して迅速に対応できるようになった。

加工領域を広げることで、クライアントとなる業界も広がる。

北新工業がここまで躍進した大きな要因は、1業種にかたよることなく多品種の製品を手がけてきたことにある。幅広くさまざまな業種の製品をつくれることが同社の大きな強みだ。「昔はヒット商品がでたら、その分野を極めるというやり方でしたが、当社は時代の流れを見据えて、あえて分散してきました。ですから現在は取引先は非常に多岐にわたります」。

生産効率と精度の両方を高い水準に保てる250tの順送りプレス。プレス機に上下に分かれた金型を装着し、型の間に材料を入れ上型と下型ではさみ込むことで製品を成形

幅広いジャンルを手がけるには設備、材料を調達する購買力、そして企画力が必要。同社はそれらを兼ね揃えたうえで、ユニットで組み立てて納品できる強みもある。これまで手がけたことがない業種でも躊躇することはないという。「基本的にいただいたお話は断らない、まずは会社の状況に合わせて見積もりします」。同社は大阪産業振興機構が実施する広域個別商談会をはじめ数多くの展示会に出展しているが、そこでのキャッチフレーズは「プロの相談所」。
さらに「不可能を可能に、プレス加工は無限の可能性を秘めている」と続く。その言葉通り未知の領域であっても果敢に挑戦し続ける。それが現場のスキルを上げ、また新しい取引先につながるのだ。そんな相乗効果が同社の順調な歩みを支えてきた。「今まで会社を縮小するなんて考えたことはない。常に上へ上へと目指してやってきた」。
そもそも創業したのは、まさにバブルがはじけた後。新田氏自ら営業に出て、戻っては現場でものづくり。当時は工具どころか雇用力もなく困窮した時期であり、毎夜遅くまで妻と2人で働いたことも。そんな日々があったからこそ、「現場にこそ創業の精神がある」という社訓も説得力を持つ。今も毎日現場に立ち、この不況のなかでも右肩上がりの成長を続けてきた。リーマン・ショックのときも多くのものづくり企業が稼働時間カットを余儀なくされているなか、残業や土曜出勤するほどの仕事量は確保していたという。

ものづくり企業の夢「自社ブランド」を確立へ。

外周周辺へのヘミング加工は、従来は単発機やラインスペーサーなどの複数台のプレス機を使用するのが一般的だったが、同社では順送機1台での加工を可能にし、年間100万個の生産を実現。工程短縮、コスト削減につなげた

ものづくり企業創業者の例に漏れず、新田氏も卓越したアイデアマンだ。これまで特許も多く取得してきた。同社のターニングポイントとなったのも15年前、ある外周ヘミング製品の順送化を完成させたことにある。それによって従来であれば機械を4~5台使わないと加工できなかった工程を1台のマシンでつくれるようにした。「はじめてトライする加工方法で、正月休みも返上して必死で取り組みました」。そんなチャレンジ精神は次の世代にも受け継がれる。10数年前に長男が入社。「現在は製造現場と営業部門を統括してくれています。長男が自分からこの会社を継ぎたいと言ってくれたこと。そう言われた以上、いい形でバトンを渡したいと考えるようになりました」。
最近では金属加工の技術を生かし、このジャンルの専門性を持つ人材も確保してインテリアブランド部門を設立した。設計力+鉄の魅力を知り尽くしたプレス屋がつくる家具。今後はこのブランドをどう育てていくか。その挑戦は次の代に続く。「時代の流れで本業を忘れてしまう会社もありますが、うちはプレス屋であるかぎり、ずっとものをつくり続けていく。決して商社にはならないぞと。ものをつくることこそ原点、そこは厳しく伝えていきたい」。

ブレイクタイム

Q

女性社員が活躍している印象がありますが、彼女たちの役割は?

A

事務担当で3人の女性社員がいますが、彼女たちがしっかり納期管理をして現場に落とし、現場予定を組むという流れができています。社内在庫のことも知り尽くしているので出荷準備までしてくれる。工場のスタッフが彼女たちに現場のことを聞いたりするほどで、当社のコントロールセンターと呼べる存在です。

Q

新卒も多く採用されていますが、採用のポイントはありますか?

A

面接で私が必ず聞くのは「食べ物の好き嫌いはあるか?」ということです。私自身、好き嫌いはないのですが、食べるということは人間の基本です。生きる力でもありますから。そこはチェックします。

企業概要

企業名
有限会社北新工業
コア技術
金属プレス加工のワンストップ対応
代表者
代表取締役 新田典彦
住所
堺市美原区大保215番地
電話番号
072-369-2286
企業HP
http://hokushin-kougyo.co.jp/
資本金
1,000万円
従業員数
45名

認証:ISO9001、平成23年度経営革新計画取得、エコアクション21認証、経営力向上計画認定、BCP事業継続計画策定